ちょっと前の話なんだけど、凄腕編集であるkaheiさんが書いた 改訂新版 コンピュータの名著・古典100冊 という記事を読んで思ったこと。
最近改訂されたこの本で取り上げられている100冊のうち21冊がASCII(出版社ね)から出ていて、単一の出版社としてはもちろんダントツのトップである。そして、
で、この21冊のうち8冊が私が企画して出した本だ。「なんだつまらん」という声が聞こえてきそうだけど、まぁそう言わずに。下記にあげたのが、私が企画した本のリストだ。全部翻訳書なのがあれだし、編集長職が忙しくて実際の編集作業を部下にまかせたものも入っているけど、細かいことは気にせずに紹介しておく。
- UNIXの1/4世紀 (Ascii books)
これは、UNIX業界の歴史を描いた珍しい本の翻訳。内容はおもしろいのだけど、翻訳に若干問題があって何人かのUNIXハッカーから怒られた。申し訳ございません。- フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集
これを出した当時、アスキーはFree Software Foundationの日本における公式の出版社で、この本もその流れで出版したもの。Stallmanのエッセイで、Free Software/Open Sourceに関わる人にはぜひ読んでもらいたい本。早く電子書籍を出さないとなぁ。- ハッカーズ大辞典 (Ascii books)
Eric S. Raymondが編纂したThe New Hacker's Dictionaryの翻訳版。数多くの技術者から、海外の文献やブログを読むときの必需品だと言われた本。- Lions' Commentary on UNIX (Ascii books)
UNIX Version 6のカーネルソースコードに1行ずつコメントをつけて解説したという幻の本の翻訳書。この本については、いろいろ思い出があるので、いつかブログに書こうと思う。- プログラミング言語C++ (アスキーアジソンウェスレイシリーズ―Ascii Addison Wesley programming series)
言うまでもないビヤーン・ストラウストラップのC++本。これは第3版だが、第4版は別の出版社から出るはず。- プログラミング作法
カーニハンとパイクによるプログラミングの指南書。日本語タイトルの「作法」は普通に「さほう」と読む。木村泉先生が翻訳した「ソフトウェア作法」では「さくほう」と読ませているが、編集部でタイトルを決める際、私が「ソフトウェア作法」を読んだことがない人でも読めるように「さほう」に決めた。- 文芸的プログラミング (ASCII SOFTWARE SCIENCE Programming Paradigm)
クヌースのLiterate Programmingを含む論文集の翻訳書。この本を作る際、スタンフォード大学を訪ねて、クヌース教授に会って話せたのはいい思い出。- The Art of Computer Programming (2) 日本語版 Seminumerical algorithms Ascii Addison Wesley programming series
同じくクヌースのThe Art of Computer Programmingの翻訳書。当時のアスキーで、この本を出したことが評価されて社長賞をもらったんだよなぁ。う〜ん。
当然のことがらこの8冊は全て持っている。その他の13冊というのも紹介されているが
以下のリストは、私が企画した以外のアスキーのタイトル。
- ワークステーション原典
- インターネットの起源
- 新装版 計算機屋かく戦えり
- アラン・ケイ (Ascii books)
- 実録!天才プログラマー (マイクロソフトプレスシリーズ)
- マイクロソフト―ソフトウェア帝国誕生の奇跡
- ビーイング・デジタル―ビットの時代
- やさしいコンピュータ科学 (Ascii books)
- はじめて読むマシン語―ほんとうのコンピュータと出逢うために
- オブジェクト指向スクリプト言語 Ruby (ASCII SOFTWARE SCIENCE Language)
- UNIXプログラミング環境 (海外ブックス)
- TEX(テック)ブック―コンピュータによる組版システム (アスキー・電子出版シリーズ)
- プログラミングWindows第5版〈下〉Win32 APIを扱う開発者のための決定版! (Microsoft Programming Series)
この13冊のうちでも『プログラミングWindows第5版』以外の12冊は持っている。実はプログラミングWindowsもこの頃のはないが版が古いのは何冊も持っているので、まあカウントしても良いような気がする。
他にそんな出版社はたぶんない。名著・古典と呼ばれるものに選出されてるということは単にたくさん本を出していたということではなく、読まねばならないと幅広く認知されていたということである。この21冊の影にもここに載っていない膨大な数の本があるし私も持ってる。
私の世代のプログラマはみんなアスキー(しつこいようだけど出版社ね)に育ててもらったようなもんなんだよなあ。雑誌ではベーマガとか日本ソフトバンクのOh!なんとかシリーズとかいろいろ通過してきてるんだけど、書籍となると断然アスキーの独壇場になる。オライリージャパンが出来る前のO'Reilyの本もアスキーだったし。黎明期をともに生きた、という感じがする。出版社としてはずいぶん形が変わってしまったアスキーも、この時代の存在感は群を抜いている。
その出版社としてのアスキーを含むグループについては最近大きなニュースがあったばかりなのは周知の通りで、そちらもめちゃ感慨深いんだけど個人的にはこちらのコンピュータ書籍出版社としてのアスキーの役割は語り継いでいきたいとふと思った。