1冊目、コーヒー研究の古い文献
まず最初は昨年中に発売されて一時期ずっと持ち歩いて少しずつ読み進めていたこちら。底本は1973年発売の『珈琲遍歴』で、後の日本のコーヒー史研究に多大な影響を与えた本です。著者の奥山儀八郎は版画家で、趣味の珈琲研究といった感じなんだけど類似の研究が他になく読んでみるとたしかになるほどこれは独特だ。著者が
私の珈琲史は江戸時代の文献から昭和初期まで、それ以後の珈琲には興味がない。
とはっきり書いていて、去年他にもたくさん出たであろう珈琲本とは全く違うテクスチャを持った本です。今日我々が当り前のように使っている「珈琲」という漢字の成り立ちを研究しているところだけでも読むと面白いと思う。日本最古のコーヒーハウスは『可否茶館』であり、こちらが可否という当て字を使っていることからも初期から珈琲と書かれていたわけではない。ただ私自身は自分の店でもなるべく「コーヒー」と表記していて、珈琲と書くときには独特の気恥ずかしさが伴っていたのだけれど本書の内容から少し認識を改めました。 底本に附録としてついていた文献リストは講談社のサイトでpdfが公開さています*1。
解説を『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス)』や『珈琲の世界史 (講談社現代新書)』で有名な旦部幸博さんが書いており、なるほど講談社学術文庫でいま復刊するというのはそういう意味合いなのかなと思ったり。ともかくコーヒーに親しむものとしては必携の1冊で、気軽に読めるようになったのは本当に良いことだと思います。2冊目、現代のコーヒーの入門書
もう1冊はこちらです。
これは読んだ直後にtwitterでも話題にしたことがあった。コーヒーに関する情報はいろいろなものが溢れていて、中でもどんなコーヒー(豆)が美味しいのかということについてはいい加減な内容のものが多いのだけれどこれは自分も含めて提供側の努力不足の面が否めないと考えてあまり発言できていないんですが、本書は「コーヒーの美味しさ」をライトに入門したい人にとってはとてもよくまとまった情報源として役に立ちます。なにせ半生をコーヒーに捧げてきた人なので信頼も置けますし、産地や農業試験場などとも近しい関係を保って生の声をたくさん拾っている。もちろん私は全面的に同意できるわけではなく、流派の違いというか相容れない面もあるにはあるのですが、全体的には読んでおいてもらえるととても話しやすくなるので、オススメしておきます。読みました。幾分の意見の違いはあれど(私がやってることも理解に苦しむ、などと書かれていたw)、全体的にとてもいいコーヒーの入門書でした。おすすめできるhttps://t.co/DV7elAPaUp pic.twitter.com/vhxym3899N
— Junya Ogino (荻野淳也) (@ogijun) August 30, 2022
大晦日にこんなことを呟いたら反響がとても大きかったのもあり、今年は部分的にはちゃんとコーヒー屋に戻りたいという願いもこめて去年買った2冊を紹介してみました。来年は店を開けたい..
— Junya Ogino (荻野淳也) (@ogijun) 2022年12月31日